マーケットメイカー ~ETFのマーケットメイクとは?~
ETFを調べるとよく名前が出てくるマーケットメイカー(マーケットメーカー)ですが、今回はその概要を説明します。ETFのマーケットメイクについても解説します。内容は中上級者向きです。
マーケットメイカー(マーケットメーカー)とは
ETFのマーケットメイク(マーケットメーク)とは、取引所で形成される市場価格と、ETFの理論価格との差を利用して利益を得る、すなわち裁定取引(アービトラージともいいます)をする行為です。
マーケットメイクをする会社はマーケットメイカーと呼ばれています。
証券会社や専業のトレーディング会社がマーケットメイカーとなっています。
なお、弊社のようなETFの運用会社がマーケットメイクもしているのかと思い問い合わせされる方も多いのですが、運用会社はETFの中身の運用をしているだけで、マーケットメイクはしておりません。
マーケットメイカーの変遷 ~証券会社から専業トレーディング会社へ
弊社が初めてETFを上場したのは2009年です。当時は指定参加者である証券会社がマーケットメイクでも存在感を出していました。
大手の国内証券会社も外資系証券会社もたくさんの会社がマーケットメイクに取り組んでいました。
しかし、その後、外資系証券会社はマーケットメイクでの存在感が急速に薄れていきました。
リーマンショックを経て米国で金融機関に対する規制が徐々に厳しくなり、リスクを取ることができなくなったためです。
その結果、一部の大手国内証券会社を除き、証券会社のマーケットメイクでの存在感は薄れました。
そこを埋めたのが、マーケットメイクを本業とする専業トレーディング会社です。
マーケットメイクの専業トレーディング会社とは
専業トレーディング会社は欧州に本社があることが多く、シンガポール、香港、オーストラリアといったアジア時間をカバーできる場所にあるオフィスからトレーディングをしています。
日本市場だけではなく、香港やシンガポールなどの他のアジア市場の商品もトレーディングをしています。
有名な会社として以下の会社があります。
Flow Traders
Optiver
IMC
Virtu
Susquehanna
その他にもたくさんの会社がありますし、新しい会社もどんどんできているかもしれません。
たくさんの会社があり、さらに一部の証券会社も参入しているため、売買代金が大きく人気のあるETFのマーケットメイクにおいては、熾烈な競争が行われています。
この競争が激しければ激しいほど、良い価格でのビッド・アスクの板が構築され、投資家にとっては望ましいです。
専業トレーディング会社の強み
裁定取引は相場観でリスクを取って利益を得る取引ではなく、システムを構築し緻密な計算を迅速に行い迅速に発注することが重要となります。そのため、ITが非常に重要です。
ある専業トレーディング会社は、トレーダー1人につき2人のIT担当者がいて、トレーディングを支えているとのことです。
ある外資系証券会社のトレーダーによると、専業トレーディング会社のシステムは、証券会社でも対抗ができない高水準にあるとのことでした。
また、ある程度リスクを取れるということも強みです。
マーケットメイク、すなわち裁定取引はリスクを0とすることは現実的にはできません。トレーディングの資金調達コストもかかりますし、ヘッジにもコストがかかり、計算の前提が想定外の事態で間違うなどリスクがあります。薄利多売のビジネスですが、1回失敗すると大きな損失を受けることもあります。そのため、リスクを全く取れないとマーケットメイクを行うことは困難です。
リスクを取れるという点では、国内大手証券会社も強みがあります。
さらに、証券会社ほど部門のしがらみがない点も強みです。
証券会社ではETFのマーケットメイクは株式部門が担当します。
原油や金などのコモディティのETFをマーケットメイクする場合は、コモディティ先物を使ってヘッジを行う必要があります。
しかし、コモディティ先物は別の部署が管轄していて、社内でその調整がつけられないといったこともあります。
部署間の棲み分けで株式以外のマーケットメイクができない証券会社も多くあります。
専業トレーディング会社にはこのようなしがらみがありません。
マーケットメイカーが興味を持っているETF
マーケットメイカーから特に問い合わせが多かったETFは以下です。
流動性が高く裁定取引のチャンスが多い銘柄が多いです。
また、そこまでETFの流動性が高くなくても、関連する先物がありヘッジがし易い銘柄に興味を持つことが多いようです。
1579 | 日経平均ブル2倍ETF |
1360 | 日経平均ベア2倍ETF |
1671 | WTI原油価格連動ETF |
1568 | TOPIXブル2倍ETF |
1572 | 中国H株ブル2倍ETF |
1573 | 中国H株ベアETF |
マーケットメイカーはETFのあるべき価格を把握するために、ETFがどのような資産で運用されているかという情報を要求します。
市場でETFを売買する投資家のみなさまの利便性を高めるため、マーケットメイカーがマーケットメイクをし易くしETFの板に良いプライスを提供できるように、当社では他社に先駆けて上場時よりPCFファイルの開示など情報開示に努めました。もちろん、マーケットメイカーだけでなく、全ての投資家のみなさまが閲覧できるように、東証のサイトを利用してPCFファイルや適時開示情報を活用し情報開示をしております。
PCFについての詳細はこちらのコラムをご参照ください。
ETFとPCF ~東証の役立つ情報~
マーケットメイカーとよく混同される指定参加者については、こちらをご参照ください。
ETFと指定参加者 ~マーケットメイカーとの役割の違い~
東証のマーケットメイク制度
東証はETFのマーケットメイクを活発にし、ETFの売買を活性化するために、マーケットメイカーに対し報酬を出すETFマーケットメイク制度を始めました。
マーケットメイカーがしっかり気配値を提示した場合に報酬を支払う制度です。この制度により、ETFの流動性が増えることが期待されます。
ETFについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
ETFの基礎知識
当社が運用するETFの一覧
当社は下表のETFを運用しています。
1579 | 日経平均ブル2倍ETF |
1580 | 日経平均ベアETF |
1360 | 日経平均ベア2倍ETF |
1568 | TOPIXブル2倍ETF |
1569 | TOPIXベアETF |
1356 | TOPIXベア2倍ETF |
1671 | WTI原油価格連動型ETF |
1563 | 東証グロース・コアETF |
1551 | 東証スタンダードTOP20 ETF |
1679 | Simple-X NYダウ・ジョーンズ・インデックスETF |
1572 | 中国H株ブル2倍ETF |
1573 | 中国H株ベアETF |
1469 | JPX日経400ベア2倍ETF(ダブルインバース) |
2516 | 東証グロース250ETF |
2555 | 東証REIT ETF |
2094 | 東証REITインバースETF |
ActiveETF
2080 | PBR1倍割れ解消推進ETF |
2081 | 政策保有解消推進ETF |
2082 | 投資家経営者一心同体ETF |
 
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