え、我が国の上場企業数、増えすぎ……?

シンプク:

PBRが低位にとどまる企業のそれなりの会社は、手元資金、余剰資産が有り余っている企業が多いように思っています。もっと配当や自社株など還元で、正しい自己資本に戻すべきではないでしょうか。

円谷:

手元資金に余剰な部分は多いのかもしれません。そこへの対応について、私は配当を優先する以上に自社株買いで資本を少なくしていくべきであり、中長期的にMBO(経営者による買収のこと。銀行やプライベートエクイティファンドの支援を得ながら非公開化する方法。)の選択肢も考えていけば良いのではないかなと思っています。
その問題の根本は、ちょっと日本は上場会社数が多すぎるという現実です。
イギリス、フランス、ドイツともにこの15年で上場企業数はおおよそ半分程度になっています。アメリカも直近は大きくいえば横ばいのまま、増えていません。
ですが、日本だけが右肩上がりで上場企業数が増えつづけています。

円谷:

今後東証の改善要請に促されPBR1倍を超える銘柄が増えていくのかどうかよりも、MBOなど非公開化が増えることで「PBRが低い銘柄が減っていく」という側面に注目すべきだと思っています。

上場メリット<上場コストの時代に

レクス:

これからMBOが増えていくかもしれない背景を教えてください。

円谷:

日本社会においては上場目的が成長資金の調達ではなく、「上場企業」というレピュテーションの獲得になっている企業が多いです。現金をたくさん持って経営をしたいのなら非公開化したらいいじゃないですかと。
今のところMBOは現実的ではない、あるいは多少考えはするけど決まっていないなかでも余剰資本をひとまず自社株買いに回していくことを考えるべきです。
そして、本当にやりたいなと思うタイミングが来たときにMBOをすればいい。

レクス:

上場に関わる環境が欧米のように変わっていくことで上場企業ブランドのメリットだけでは割に合わないと思う企業も増えるかもしれませんね。

円谷:

ただ何の戦略的な思考もなく、「PBRが低いのはまずいからとりあえず配当でもあげておくか」という場当たり対応は、企業にとっても良くないのではと思っています。
惰性での上場維持。それは失礼な言い方に聞こえるかもしれませんが、そろそろ真剣に見直しを考えませんかということについて機関投資家とアカデミックが発信するタイミングであるとも思います。

シンプク:

いわゆる「同意なき買収」に関する手続きが日本でも整備されつつあるなか、上場のリスクについても意識するべきなのでしょうね。

円谷:

やはり突然買われるということがいやならば上場をやめることを考えるべきでしょう。
上場して誰でも株が買える状態になってしまう土俵に乗るという決定をした以上、買った相手が誰かというのは選べない。

円谷:

意にそぐわない相手だから敵対的に身構えるというのは違うのでないでしょうか。もちろんその覚悟は大変な勇気が伴うわけですが。


アクティブETFについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
円谷教授インタビュー